武蔵野マガジン

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親子三代で『花祭り』を歌う|大橋妙子さん

文=菅野浩二(ナウヒア) 写真=本人・大学提供

大橋妙子(おおはし・たえこ)さん|公務員
東京都練馬区出身。1999年3月、武蔵野女子学院高等学校(現 武蔵野大学高等学校)を卒業。高校時代の思い出の一つは修学旅行。高校2年次、生まれて初めて北海道を訪れ、オホーツク海や網走刑務所などを見て回った。後輩にあたる娘さんの学校生活については、「共学になっても穏やかな校風は変わっていないと思います。英語教育とICT教育が充実しているなと感じますね」と語る。

母からは「穏やかだし、のどやかな雰囲気がいい学校よ」と勧められた

親子三代の成長を見守ってきた並木道 親子三代の成長を見守ってきた並木道

母が通い、自身が通い、娘が通っている。武蔵野キャンパスの並木道は親子三代にわたる青春の象徴だ。

「親子四代になったらそれはそれでいいのかなあと思っています」

ゆったりと話すのは大橋妙子さんだ。武蔵野女子学院中学校・高等学校(現 武蔵野大学中学校・高等学校)で中高の6年間を過ごし、武蔵野大学の現代社会学部現代社会学科(現 政治経済学部政治経済学科)に進学した。十代のほとんどを緑豊かなキャンパスでゆるやかに過ごした。

入学の決め手の一つとなったのは、母の母校だったこと。母からは「穏やかだし、のどやかな雰囲気がいい学校よ」と勧められ、最初から好印象だった。小学5、6年生のときには文化祭に足を運んだ。銀杏並木の通りを歩く間、胸が高鳴った。キャンパスを彩る先輩たちののびやかな姿に心を打たれたからだ。

在学中はパイプオルガンを弾いていた 在学中はパイプオルガンを弾いていた

入学してすぐに、教育の軸にある仏教の空気感が気に入った。大橋さんは言う。

「雪頂講堂には仏教伝道協会から寄贈されたパイプオルガンがあって、入学式では仏教讃歌の『花祭り』の歌が歌われて、とても素敵だなと思った記憶があります。仏教の行事も多くて好きでしたし、仏教の教えから感謝の気持ちを持つ大切さや人を思いやる心の大事さを学ぶことができました」

思えば、ありがたみを感じる姿勢や気づかいの重みは、小さなころから母に伝えられていた。多感な3年間を武蔵野女子高等学校で過ごした母も仏教教育を基礎とする人格教育を受けており、家庭でその教えにふれていたから「ほとけのねがい」が中心にある校風にすんなりとなじむことができた。

友だちもすぐにたくさんできた。中高の6年間では、別学の特徴も謳歌したという。

「女子校ならではの雰囲気も好きでした。異性の目を気にせず、のびのびと過ごすことができたと思います。なかには、おてんばな子もいて、若い男性の先生をちょっとからかってみたりして。穏やかながらも元気な感じがあって楽しかったですね」

周りと協力して何かをやり遂げる達成感を体験した6年間

体育祭の「鈴割り」も思い出の一つ 体育祭の「鈴割り」も思い出の一つ

中学校時代はバレー部とダンス部、高校時代はフォークソング部に在籍した。ダンス部とフォークソング部では文化祭でパフォーマンスを披露。曲や曲順を決めるなど、本番までに自分たち主体で活動する時間は濃厚だった。大橋さんは振り返る。

「周りと協力して何かをやり遂げる達成感を体験した6年間だったなと感じます。学校としても、みんなで頑張って一つのことに取り組んで、誰かが困っていたら助け合って最後までやり通す、という教育方針だったと思います」

大きな一体感と充実感を味わったのは高校3年次の体育祭だ。武蔵野女子学院高等学校の伝統の一つで、最上級生たちが扇子を手に『荒城の月』を舞う。大橋さん自身は中学生のときに初めて見て心を揺さぶられ、「自分も早く踊ってみたい」と憧れた。練習中は先生方から厳しい指導を受ける場面もあった。だからこそ、本番に全員で踊り切ったあとの達成感は格別だった。「『荒城の月』は最高の思い出の一つですね」と笑顔を浮かべる。

6年間を一緒に過ごし、放課後や休日に吉祥寺や所沢、原宿や渋谷に遊びにも出かけた友人たちとは今でも付き合いがある。同じ時間に同じ空間にいて、同じものを見たり、同じことを感じたりしたからこそ結びつきは強いと感じている。

「多感な時期に一緒に過ごした時間が長かったので、気心も知れていますし、お互いなんでも知ってるから信頼できますよね。大人になってからの友人とは違う、より密接な人間関係が出来上がっていると感じています。コロナ禍になってからはなかなか会う機会がなくなったんですが、久々に会ったら昔に戻ったみたいに話は尽きないんじゃないかなと思います」

娘さんも入学し、「人を思いやれる⼼が身についた」

大橋さんは今でもときどき武蔵野キャンパスを訪れている。娘さんが武蔵野大学高等学校に通っているからだ。保護者会や文化祭などで母校に戻るたび、懐かしさが込み上げる。

「正門から銀杏並⽊が伸びる風景は変わらないですし、『よくここの食堂に通ったな』などと思い出します。それから、私は朝拝でパイプオルガンを弾いていたので、講堂に入るとそのときの記憶がよみがえりますね」

娘さんが中学受験を検討しはじめたころ、大橋さんはそれとなく母校への進路も勧めた。母も自身も受けた仏教に基づく人間教育が何よりの魅力だった。娘さんは祖母と母と同じ道をめざし、見事合格を勝ち取った。

大橋さんが着た制服(左)と娘さんの制服(右) 大橋さんが着た制服(左)と娘さんの制服(右)

2023年度に高校3年生になる娘さんの人間的成長は頼もしい。⾃分がやられて嫌なことはしないなど、他人を傷つけるようなことはしない。「人を思いやれる⼼が身についたと思います」と大橋さんは目を細める。

娘さんは中学に入学したころからブラスバンド部の活動に打ち込んでいる。十代の自身がそうだったように、大橋さんは友人関係に恵まれていると感じている。

「楽しんで部活に取り組んでいますし、学校のお友だちとも楽しく遊んだり⼀緒に勉強をしたり、テスト前もわからないところがあると教え合ったりしているようです。やはり校風や教育方針に賛同して入学しているお友だちばかりなので、波長も合うんでしょうね」

ときどき母が『花祭り』を歌い出す。ほどなく大橋さんが歌声を重ね、娘さんが追いかけてくる。親子三代、同じ学び舎だからこそ心が通い、かけがえのない時間を過ごせている。

※記事中の肩書きは取材当時のものです。また、学校名は卒業当時の名称です。

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