武蔵野マガジン

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「リベラル・アーツが実践されていたんだと思います」|小島理恵子さん

文=菅野浩二(ナウヒア) 写真=本人提供、鷹羽康博

小島理恵子(こじま・りえこ)さん|小島法務行政書士事務所 代表
群馬県出身。群馬県立桐生女子高等学校で学んだあと、1994年3月に武蔵野女子大学(現 武蔵野大学)の文学部日本文学科を卒業。卒業旅行は自身初の海外旅行で、サークルの友人と2人でトルコを訪れた。Jリーグ観戦を一つのきっかけにサッカーファンになり、現在は海外にも試合を見に行く。イングランドのマンチェスター・シティが特に好きなクラブで、ホームゲームのすべてを同一席で応援できるシーズンチケットを持っている。

見識がじっくりと広がる感覚に胸が躍った

群馬県から上京して武蔵野女子大学に入学 群馬県から上京して武蔵野女子大学に入学

武蔵野女子大学(現 武蔵野大学)で身につけたのは教養だ。在籍した日本文学科の学びに限らず、幅広い知識を持つことができた。おかげで、さまざまな事柄に好奇心を抱けるようになった。

土台は武蔵野女子大学に入学する直前に養われた。小島理恵子さんは話す。

「高校3年生のとき、受験の小論文対策で小林秀雄の本をたくさん読んだんです。小林秀雄は文学をはじめ、絵画や映画、音楽など多様な分野をテーマに論じています。高校生のうちに広い世界にふれていたので、大学時代の講義を楽しく受けることができました」

女子高校から進学したため、女子大学の雰囲気はすぐにしっくりきた。武蔵野キャンパスのおおらかな雰囲気と、女子だけのどこか穏やかな空気は文字どおり肌に合った。

卒業旅行ではトルコを訪れた 卒業旅行ではトルコを訪れた

心地よい環境で、間違いなく視野が広がった。比較文学論の講義では日本に加え、イギリスの歴史や文化も知り、哲学の授業では古代ギリシアの世界観やフランスの思想などにふれた。宗教と社会の時間では仏教を含め、宗教全般の本質や構造を学んだ。心理学や生物学、法学や映画研究の講義も楽しく受け、見識がじっくりと広がる感覚に胸が躍った。小島さんは指摘する。

「最近の大学が重視しているリベラル・アーツが実践されていたんだと思います。経営学や工学とは違い、文学や哲学、あるいは宗教学などは実学ではないかもしれませんが、人生を豊かにしてくれるものだと身にしみて感じています。実際、私がよく海外旅行に行くと、武蔵野女子大学で学んだことがつながってくる場面が少なくありません。文学でも哲学でも宗教学でも、世界を見据えていたからで、その国の歴史や文化や思想を少しでも知っていると、海外で過ごす時間がより楽しくなります」

幅広く教養を磨いた4年間の最後には、市井の人々の人生を丁寧に掘り下げた有島武郎を取り上げて卒業論文を書き始めた。「有島武郎 『惜みなく愛は奪う』における愛の考察について」という論文を仕上げ、1994年3月に卒業証書を手にした。

大学生活ではサークルでもアルバイトでもゴルフに向き合う

大学生活ではゴルフに打ち込んだ 大学生活ではゴルフに打ち込んだ

大学生活ではどうしてもやりたいことがあった。高校時代、お気に入りのお笑い芸人が深夜のラジオ番組でよくゴルフの話をしていた。都会的で大人のスポーツな気がして、大学に入ったら絶対にゴルフをすると決めていた。

入学式からほどなく、他大学のゴルフサークルに勧誘された。「準体育会系」という謳い文句に引かれ、ほとんど迷わず入会を決めた。小島さんは振り返る。

「『準体育会系』というだけあって、結構本格的だったんですよ。週に3回くらい練習して、年に何回か、主に栃木県の矢板市にあるゴルフ場で合宿も行われました。一日中走るような厳しさがあって、おかげさまで大学時代に82か83というベストスコアを残すことができました。アルバイトも三鷹市にあるゴルフ練習場でしていましたね」

サークルでもアルバイトでもゴルフつながりで多くの友人ができた大学生活を終えると、群馬県に帰郷し、藪塚本町の役場に入職した。藪塚本町は2005年に太田市と合併し、以降は太田市役所の職員として働いた。23年にわたる公務員生活ではさまざまな業務を経験している。小島さんは「時代の流れを目の当たりにしてきた感じがあります」と話す。

入職直後は「65歳以上の高齢者が人口の4分の1を占めることになる」という予測のもと、介護保険制度の立ち上げを推進し、2008年、アメリカの大手投資銀行の倒産によって世界的な大不況が起こったリーマン・ショック時にはケースワーカーとして生活保護に携わった。地域活性化につながる北関東自動車道の開通事業にも従事したうえ、道路建設工事の入札や、調整区域の規制緩和による都市計画法の開発許可にも関わった。

大学時代にぐっと育まれた好奇心をもとに公務員としてさまざまな業務を手がけた達成感から、四十代の最後に退職を決意する。公務員生活のなかでも建築指導課の一員として農地を含む土地の運用が楽しかったため、不動産に強い行政書士になる道を選んだ。

サッカークラブ、マンチェスター・シティの欧州制覇を目撃

乾貴士の応援でスペインを訪れた 乾貴士の応援でスペインを訪れた

税理士法人と行政書士法人で働いたあと、2023年に行政書士の国家資格を取得した。ほぼ同時に独立を決断し、小島法務行政書士事務所を立ち上げた。

仕事とほとんど同じくらいの情熱を捧げているのが、サッカー観戦だ。息子がサッカーを始めたのを機にJリーグを観に行くようになり、注目していた乾貴士という選手がドイツのクラブに移籍すると、海外サッカーにも目を向けるようになった。サッカーについて語るとき、小島さんの舌は滑らかになる。

「乾選手がスペインのエイバルというクラブに移籍したときは、ホームスタジアムに彼を応援する横断幕を掲出しました。香川真司選手がマンチェスター・ユナイテッドに加入した際、私は同じ街のマンチェスター・シティというクラブに引かれたんですね。スペイン人のダビド・シルバという選手を特に好きになって、彼の生まれ故郷のグランカナリア島も訪れました。マンチェスター・シティに関して言えば、2022-23シーズンのチャンピオンズリーグ決勝をトルコのイスタンブールで生観戦して、クラブ史上初の欧州王者になる瞬間に立ち会うことができました」

好きなことを追い求めるなかで、英語力は独学で磨き上げた。ドイツ、イングランド、フランス、イタリア、スペイン、マケドニア、アゼルバイジャン……サッカーに魅了されて15年ほど、さまざまな国を訪れてきたが、異国をめぐる際は武蔵野女子大学のリベラル・アーツで身につけた教養が生きている。それぞれの国の歴史や文化や思想を少しでも知っているからこそ、サッカー観戦や観光を含む旅行の行程が満ち足りるのだという。

仕事も趣味も充実している小島さんは、武蔵野女子大学での4年間で知った幅広い知識を持つ喜びを原動力に、新たな挑戦に臨む。

「不動産の売買や賃貸物件のあっせんができるように宅地建物取引士の国家資格を取得して、それから不動産鑑定士の試験にも合格したいと思っています。不動産の経済価値を判定したり評価したりできるようになって、いずれは海外でも土地の開発などの仕事をしてみたいです」

  • 特に好きなクラブはマンチェスター・シティだ

    特に好きなクラブはマンチェスター・シティだ

  • 大好きなダビド・シルバの銅像と撮影

    大好きなダビド・シルバの銅像と撮影

  • 2023年6月にはチャンピオンズリーグ決勝を生観戦した

    2023年6月にはチャンピオンズリーグ決勝を生観戦した

  • 「いずれは海外でも土地の開発などの仕事をしてみたいです」

    「いずれは海外でも土地の開発などの仕事をしてみたいです」

※記事中の肩書きは取材当時のものです。また、学校名は卒業当時の名称です。

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